前橋地方裁判所高崎支部 昭和42年(ワ)63号・昭40年(ワ)73号 判決
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〔判決理由〕一 <証拠>によれば、原告は昭和一六年五月二五日確永倉庫株式会社から、(一)安中市原市字上町南一一四二番の二、宅地六三坪、(二)同所一一四四番の一、宅地一五五坪、(三)同所一一四五番の二、宅地三九坪、(四)同所一一四五番の三、宅地二六坪、(五)同所一一四五番の六、宅地五七坪、(六)同所同番の四、宅地八坪及び右地上の建物を買受け、即日代金一万円を支払つてその所有権を取得し、地上建物を取りこわして高崎市内へ移築し、その跡地を近所の人に新炭置場として使用させたりしていたこと、しかるに原市町農地委員会は右土地につき、自創法に基づき昭和二三年一〇月二日を買収の期日とする買収計画を樹立し、群馬県知事は右計画に基づき前記会社に対し同日付をもつて買収処分をなし、同日半田栄一に対し売渡処分をなしたこと、を認めることができる。
二 <証拠>によると、原告は右買収処分に反撥し、昭和二四年頃には前記一四四番の一地上に建物を建てて自己の権利を主張し、同三五年には群馬県知事と半田栄一とを被告として前橋地方裁判所に前記買収処分および売渡処分の無効確認と所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴を提起したところ、右訴訟は同地裁昭和三五年(行)第三号事件として係属し、同三八年一二月二六日原告の全面勝訴判決が言渡され、右判決は群馬県知事に対する関係で同三九年一一月二〇日、半田栄一に対する関係で同四〇年四月二六日、いずれも控訴の取下により確定したことが認められる。
三 被告が前記行政訴訟係属中の同三五年三月一五日前橋地方裁判所高崎支部に対し、本件土地につき仮処分を申請し、同庁昭和三五年(ヨ)第一一号工事妨害禁止仮処分申請事件として、原告は被告が本件土地に施行する児童遊園地建設工事を妨害してはならない旨の命令を得たことは当事者間に争いがない。<証拠>によると、被告は昭和三四年度において国から児童遊園地建設補助金一六万六〇〇〇円の交付を受けて遊園地建設を計画し、半田栄一から本件土地の寄付を受け、右仮処分命令を得た上で地元区長が中心となり、付近住民の勤労奉仕を受けて本件土地を整地し、児童遊園地を建設したことが認められる。
四 <証拠>を総合すると、本件土地は従来石積みで道路より高くなつており、その高さは大人が片足をあげてやつと上れる位であつたが、被告は前記遊園地工事に際してブルドーザーを入れて周囲の石垣を壊し、土を出して整地したこと、そして前記判決が確定すると被告は自発的に本件土地の使用を中止し、ブランコ、ジヤングルジムなどの遊園地設備をとり払い、自己の設けたブロツク塀も撤去して明渡したのであるが、その時の本件土地の高さは道路と同じないしはやゝ低くて雨が降ると水たまりが出来る宅地に不適な状況となつていたこと、原告は本件土地を回復した直後の昭和四〇年六月頃、本件土地を含む前記被買収地全部につき隣地居住者らに買収り方を申し込んだが、当時本件土地の時価相場は約一万円であつたけれども、土盛りをしなければ家を建てられないため減額を請求され、坪当り六、〇〇〇円で売却せざるを得なかつたこと、以上の事実を認めることができる。
五 以上の事実に基づき被告の不法行為の成否について判断するに、被告のなした本件土地の右石垣破壊、土砂搬出行為が原告の本件土地所有権侵害という不法行為の客観的要件を満すことは言うまでもない。そして、前認定のように本件土地につき所有権の争があり、原告が自己の権利を主張して訴訟を提起していた事実に鑑みると、被告の右侵害行為は少なくとも過失によりなされたものと判断するのが相当である。そして、被告の右不法行為により原告が財産的損害を蒙つたことも常識上肯認できるところである。そこで損害額について考えるに、原告は本件土地の売買価額と時価相場との差額を損害額と主張するところ、一般に土地の取引における売買価額は売買当事者間の諸々の要因の相互作用によつて決定されるものであるが、本件においては原告は結果的にはいつたん出来上つた遊園地を子供達から奪う形となつたため付近住民と感情的対立を来し、本件土地を処分せざるを得ない不利な立場に追いこまれたことは推察するに難くなく、加えて本件土地の形状が宅地不適の状態に変更されたため時価相場を下回る価額で売却することを余儀なくされたものであり、他に右売買代金額の決定に影響したと考えられる特段の事情を認めうる証拠は存在しないのであるから、結局、原告主張のとおり売買代金額と時価との差額が被告の不法行為による損害ということができる。そして、その損害額が少くとも四九万円を超えることは明らかである。更に被告の不法行為により原告が精神的損害を受けたことも推認に難くないところであるが、その慰藉料は本件の諸般の事情に鑑み一万円をもつて相当と認める。<後略> (清水悠爾)
<物件目録略>